スピーカーマネージメントの必須機材「チャンネルディバイダー」とは?
PAを行う上では「チャンネルディバイダー」という機材を使用する場合がありますが、PA初心者の方にはよく分からない機材だとは思います。。。
初心者が使用するようなPAシステムでは、チャンネルディバイダーを必要としない場合もあるため、あまり馴染みがないかもしれませんね。
今回の記事では、チャンネルディバイダーについて、その種類と機能について解説していきたいと思います。
目次
チャンネルディバイダーとは?
チャンネルディバイダー(Channnel Divider)というのは、ある程度複雑なスピーカーシステムを構築する時必要になる機材です。
チャンネルをDivide(分割)する機能を持つ機材なのでチャンネルディバイーダーと呼ばれています。
略して「チャンデバ」などと呼ばれる場合もあります。
チャンネルディバイダーもミキシングコンソール同様に「アナログ」のものと「デジタル」のものがあります。
チャンネルディバイダーの解説をする前にPAで使われるスピーカーシステムについて少し解説しておきます。
PAで使われるスピーカーシステム
PAにおけるスピーカーシステムは大きく分けると以下の2種類になります。
- フルレンジシステム
- マルチウェイシステム
PA初心者には「なんのこっちゃ?」という話ですよね。
それでは、1つずつ解説していきます。
フルレンジシステム
フルレンジシステムというのは、1つのスピーカーユニットの中に全周波数帯域のユニットが収められているスピーカーシステムのことを言います。
通常、「スピーカー」と言われた時には、このフルレンジシステムのことを指します。
基本的には、中低音再生用のウーファーと広音再生用のツイーターで構成されます。
また、スピーカーに入力された音をウーファーとツイーターに分けるためのネットワークと呼ばれる部品もユニットの中に収められています。
ちなみに、音を分ける意味は、ウーファー、ツイーターそれぞれにおいて得意な再生周波数帯が異なるからです。
できるだけ得意な帯域だけを送ってあげられれば、最大限の性能を引き出すことができるのです。
代表的なフルレンジスピーカーとしては、Electro Voice社のSX300というスピーカーがあります。
1つのユニットにウーファーとツイーターが設置されています。
下部の丸い部分がウーファーで、上部の少し凹んでいる部分の奥にツイータが設置されています。
マルチウェイシステム
フルレンジシステムが1つのスピーカーユニットで構成されているのに対して、マルチウェイシステムは複数のスピーカーユニットを使用します。
例えば、低音用のサブウーファーとフルレンジスピーカーを使用したシステムは2ウェイシステムと呼ばれます。
先ほどのフルレンジスピーカーのSX300を2ウェイシステムで鳴らそうとすると、SX300と相性の良いサブウーファーSB122というものがあります。
このスピーカーを追加することで、低音域をより良く鳴らすことができるようになるのです。
大型のPAシステムではほぼ例外なくマルチウェイシステムが採用されています。
マルチウェイシステムでは、スピーカーが複数(フルレンジ&サブウーファー)あるのに、音を送るミキシングコンソールからは1系統のメイン出力しか送れません。
ということは、ミキシングコンソールから出てきた音の信号を(上記の例だと)フルレンジスピーカーとサブウーファーに分けてあげる必要があります。
そこで登場するのがチェンネルディバイダーです。
チャンネルディバイダーの使われ方
マルチウェイシステムを構築するためにはチャンネルディバイダーが必要であるということはご理解いただけたかと思いますので、次にはチャンネルディバイダーというのは、どのように使われるのかを解説していきたいと思います。
チャンネルディバイダーの目的は、使用するスピーカーに得意な帯域の音を送ってあげることです。
イメージ図で示すと以下のようになります。
ミキシングコンソールから送られてきた音には、低域〜広域まで全ての周波数帯の音が含まれています。
チャンネルディバイダーを使って、それらの音を使用するスピーカーが鳴らすのに得意な周波数帯の音のみを送ってあげるのですが、チャンネルディバイダー側での設定パラメーターとして「クロスオーバー周波数」というのがあります。
このクロスオーバー周波数を適切に設定してあげることで、サブウーファーには低域だけを、それ以外の音については、フルレンジスピーカーに送るということができます。
上記の図は、あくまで概念的な図なので、ここまできっちりと音を分割できるわけではありませんので、その点はご承知おきください。
今回ご紹介したのは、2ウェイシステムですが、実際のPA現場では3ウェイシステムが使われていたりもします。
3ウェイシステムの場合は、「低域」「中域」「広域」で使用するスピーカーを分けます。
これによって、濁りのないクリアなサウンドが作れるのです。
ただし、PA初心者の場合は、3ウェイシステムは組まなくても2ウェイシステムで十分だと思います。
3ウェイシステムにするということは、その分調整も難しくなり、機材量も増え、コストもかかってくるということなので、PA初心者やアマチュアPAには色々な意味で使うのが難しいシステムです。
「アナログチャンネルディバイダー」と「デジタルチャンネルディバイダー」について
冒頭でも少し触れましたが、チャンネルディバイダーもミキシングコンソールと同様に「アナログ」と「デジタル」があります。
現代においては、アナログのチャンネルディバイダーを使っているケースというのは減ってきているのではないかと思います。
その理由としては、「デジタルの方が簡単で機能的だから」ということになると思います。
アナログチャンネルディバイダーというのは、以下のような機材になります。
こちらは、dbx社の234xsという機種です。
これで3ウェイシステムまで対応できます。
調整に使用するのは、クロスオーバー周波数を設定するつまみと、それぞれの帯域の音量レベルを調整するつまみのみです。
これらのつまみを操作してスピーカーの調整をしていくわけですね。
実際に音を聞きながらの調整となるので、初心者にはとても難しい作業だと思います。
そこで重宝するのがデジタルチャンネルディバイダーです。
こちらのデジタルチャンネルディバイダーは、dbx社のDriveRack PA2という機種です。
先ほどのアナログチャンネルディバイダーと比べるとディスプレイなども装備されておりデジタル感が出ていますよね!
こちらのデジタルチャンネルディバイダーは、単なるチャンネルディバイダーの機能だけではなく、イコライザーやフィードバックサプレッサー(ハウリングを取り除いてくれる機能)、リミッター(過度な入力が来た時に音を遮断してスピーカーを保護する機能)がついていたりしています。
そのため、デジタルチャンネルディバイダーは「デジタルオーディオプロセッサー」などと呼ばれることが多いです。
デジタルオーディオプロセッサーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
チャンネルディバイダーは、より良いスピーカーシステムを構築する上では必須の機材です。
そして、そのトレンドっとしては、他の機材同様にアナログ→デジタルの動きがあるため、今後、購入を検討される際には、デジタルのものを選ぶことをおすすめしたいですね!
まとめ
チャンネルディバイダーは、良いスピーカーシステムを構築する上で重要な役割を果たす機材です。
PA初心者には少しとっつきにくい機材だとは思いますが、実はそんなに複雑怪奇なものではありません。
また、デジタルチャンネルディバイダーであれば、クロスオーバー周波数などを自動で設定することができたりするので、素人でもプロ並みの設定ができるというのもあるので、ぜひ活用していただくと良いかなと思います。