知って得する!室内音場の特徴
PAをする場所というのは、大きく分けると「室内」と「屋外」の2パターンがあります。
また、PAをする場合の多くは、ライブハウス、コンサートホール、アリーナなどの室内で行う場合が多いでしょう。
そんな室内という音場の特徴というのはどんなものがあるのでしょうか?
反射音があること
屋内の音場の特徴は何と言っても「反射音があること」です。
屋外ではこの反射音というのはあまりありませんが、室内では壁や床や天井などに音がぶつかり、反射音が発生します。
つまり、室内で楽器の音を聞く際には、「楽器の直接音」と「反射音」を同時に聞いていることになるのです。
従って、同じ楽器の音でも室内で聞くのと屋外で聞くのでは音が変わってくるのです。
室内での音の聞こえ方というのは、その反射がどのように起こるかによって大きく変わってきてしまいます。
そして、この反射音が壁や床や天井に次々とぶつかってあなたの耳に聞こえてくるときには、独特の聞こえ方をします。
これを「残響」と呼びます。
大浴場で声を出した時に自分の声が響くのを経験したことがあるかと思います。
あの聞こえ方が「残響」なのです。
残響の量を表す「残響時間」
残響の量は、「残響時間」という指標で表されます。
そして、その残響時間というのは、音のエネルギーが、原音の100万分の1に減衰するまでに要する時間のことを指します。
音というものは、反射する毎にエネルギーを失っていきます。音が物質にぶつかった時には「反射」「吸収」「透過」という3つの現象が複合的に起こります。
そして、音が反射する際には、吸収、透過によってエネルギーを奪われます。
その残りが反射音のエネルギーとなります。
このように反射を繰り返すと徐々に音のエネルギーは小さくなっていくのです。
残響時間の公式
残響時間というのは、以下の数式で表されます。
残響時間 = 0.16 × (空間の容積[m3]) / (空間の全吸音力)
この公式はセイビン(Sabine)の公式と呼ばれているものです。
「空間の全吸音力」というのは、大ざっぱに言えば室内にある音を吸収(吸音)する物質(吸音材など)の量と考えても良いでしょう。
この公式から分かることは
- 空間の容積が大きいほど(大きな空間ほど)残響時間は長い
- 空間に吸音材が少ないほど残響時間が長い
ということです。
この式を活用すれば、空間の残響時間を計算できます。
しかし、通常、残響時間というのは音の周波数によって異なります。
低音ほど残響時間は長く、高音ほど短くなるのが一般的です。
そこで、コンサートホールなどの残響時間を表す際には、以下のどちらかの方法で表されます。
- 各周波数ごとの値を一覧表にする
- 500Hzの残響時間を代表として使う
例えば、株式会社永田音響設計様のホームページには、同社が過去に手掛けられたホールの残響時間が掲載されています。
この表記を見ると「残響時間(満席/500Hz)2.3秒」と書かれています。
つまり、このホールは、満席という条件で500Hzの音が2.3秒の残響時間を持っているということです。
距離減衰が少ない
屋外で音源から出た音は、距離とともにどんどん減衰していきます。
これを距離減衰と言います。
一方、室内では反射音や残響というものが存在するため、屋外に比べると距離減衰が少なくなります。
逆に言うと、室内だと残響が多すぎるということになります。
つまり残響時間が長すぎるということが起こるのです。
そのような場合は、残響時間の調整を行います。
最も効果がある方法としては、吸音力を変化させる、つまり吸音材を適切に配置するということが挙げられます。
吸音材を適材適所に配置することで必要な音響特性を実現するように設計することが室内空間の音響設計の1つの作業でもあります。
まとめ
室内という音場は、「音の反射」というものが屋外に比べると多く存在しています。
これが室内音場の大きな特徴です。
そして、その反射音によって作り出される残響、そして残響時間を適切に制御することで音楽を良い響きで楽しめる空間を作り出すことが出来るのです。