音のかくれんぼ「マスキング効果」とは?
「マスキング効果」というのは、二つの音が同時に鳴っている時にもう一方の音がかき消されて聞こえなくなってしまう現象のことを言います。
- テレビを見ているとき、近くで電車が通ると音で聴こえにくくなる
- ライブハウスなどの大音量の場では、人の話声が聴こえなくなる
- エアコンをつけている時は気付かなかったが、エアコンを切った瞬間に時計の音が聞こえ始めた
などといったことがマスキング効果の例になります。物理的には存在する音でも人間が聞き取る際にその情報を自動的に削除してしまうのです。人間の聴覚は不思議ですね。
マスキング効果は実は2種類あります。「周波数マスキング」と「時間マスキング」です。
「周波数マスキング」はマスクする音つまり妨害する方の音よりも高い音に対して強いマスキング作用をします。
つまり、低い音は高い音を邪魔しやすいということです。
「時間マスキング」は大きな音が鳴った後の小さな音は聞こえにくいということです。
爆竹の音がなった後に部屋の時計の小さな音は聞き取れないというのが「時間マスキング」の例です。
マスキング効果は実はMP3などの圧縮技術にも活用されています。MP3に変換するとファイルの容量が小さくなることをご存知の方も多いと思います。
通常、CDはWAVEという形式で音を保存しています。
これは、全ての音の情報が入った音源になります。これをMP3という形式で圧縮してファイル容量を小さくしていく訳ですが、素人が聞いた感じだとWAVEファイルの音とMP3の音はあまり変わらないはずです。
それではなぜ聞こえる音は変わらないのにファイル容量をここまで下げることが出来るのか?
それは、マスキング効果で聞こえない音をカットしているからです。
「どうせ聞こえない音は入れておかなくても大丈夫でしょ?」というのがMP3に代表される圧縮技術の原理なのです。
PAでの応用としては、「低音は高音をマスキングしやすい」というのを意識して音作りをすることでしょう。
ギターの音を作る際も低音が効きすぎたギターの音は芯がありません。
これは、ギターの低音が芯を出すために必要な中音をマスキングしてしまっていることが原因です。
このように人間の聴覚の特性を考慮した音作りがPAオペレーターには求められます。