知れば得する「マイクの指向性」

マイクロフォン(以下、マイク)は、PAを行う上ではとても重要な機材です。

そして、世の中には多種多様なマイクが存在しており、それぞれ特徴があります。

PAエンジニアは、それらの特徴をしっかりと理解し、その時々に最適なマイクを選んでいくことが求められます。

マイクを選ぶ上で知っておくべき重要な知識の1つとして「指向性」があります。

こちらの記事では、マイクの指向性について解説していきたいと思います。

マイクの指向性って何?

マイクは、音を拾う(集音する)ための機材ですが、全ての音を拾っているわけではありません。

マイクにも拾うことができる範囲があります。これは、拾うことができない範囲もあるということの裏返しです。

この「音を拾うことができる範囲のパターン」のことを指向性と呼びます。

代表的な3つの指向性

マイクの指向性として代表的なものは3つあります。

  • 単一指向性
  • 無指向性
  • 双指向性

の3種類です。

では、それぞれ解説していきましょう。

単一指向性

この類のマイクがPAでは一番好まれて使用されています。

世界標準のPA用マイク「SHURE SM58」も単一指向性のマイクです。

マイクの指向性というのは、ポーラパターンと呼ばれる図で表されます。

今回のポーラパターンは簡易的に描いたものですので、実際、マイクのスペック表などに載っているものとは異なります。
(イメージだけ捉えていただければOKです)

この図は、十字線が交わる中心にマイクを置いた場合に音を拾ってくれる範囲を示したものです。

単一指向性のマイクは、できるだけで正面の音を拾うように設計されたマイクです。

ですので、正面の音を拾う範囲が大きく、背面の音は極力拾わないような指向性になっていることがわかります。

このように、マイクで狙った部分の音を拾ってくれるという特徴があることから、オンマイクでできるだけ他の音が被らないように集音したいPAにおいてのニーズにはドンピシャなわけですね。

また、余計な音を拾わなくてよいため、ハウリングにも強いマイクなのですね。

無指向性

次に無指向性のマイクについてご説明します。

その名の通り指向性というものがないので、マイクの周囲360度が集音できる範囲です。

このようなマイクは、ライブなどのPAではあまり使われません。

おそらく使ってしまったら、ハウリングの嵐・・・(笑)

無指向性マイクは、レコーディングなどで部屋の鳴りを集音したい時などに使われたりします。

双指向性

最後に双指向性マイクについて説明します。

マイクを挟んで前後に集音できる範囲を持っていますので、マイクの横からの音というのは、理論上は集音しないマイクということになります。

双指向性マイクは、PAではあまり使われず、対談などの2人がマイクを挟んで向かい合って話す音を集音するなどといった場合には重宝します。

指向性ができる理由

指向性というのは、その範囲だけの音をマイクが拾いにいくと思いがちですが、それは違います。

そんな奇跡的なことはできません。

ではどうしているかと言うと、音の引き算をやっているんですね。

単一指向性のマイクを例にしてご説明します。

人がマイクに向かって声を発した時には、もちろん正面からの音が一番大きいのですが、マイクの後ろにも音は回ります。

逆にマイクの後ろから入ってくる音というのは、マイクの正面にも回り込みます。

こららの信号を合成して、マイク後方から入っていくる音を相殺するのです。

オーディオテクニカ様のウェブサイトにわかりやすい解説がありましたのでご紹介させていただきます。

特定の方向を捉えやすい性質を持っているのを「単一指向性」マイクロホンと呼ぶ。
無指向性と構造が違うのは、振動板の後ろ側にも音の通り道として穴や溝が設けられている点だ。
後方で鳴った音は、まずこの穴や溝から入って振動板の裏側に届く(間接音)。
同じ音は回り込み、少し遅れて振動板の表側にも届きます(直接音)。
そこで、穴や溝から振動板の裏側までに障害物などを置いて間接音の速度を遅らせ、直接音と同時に到達するようにすると、この音は振動板の表と裏で同時に生じた同量のエネルギーとして相殺され、電気出力にならない。
前方で鳴った音は、まず先に振動板の表側に伝わる。
その後の裏側への回り込みは、例の障害物によって到達がさらに遅くなる。
この時間差によってエネルギーは相殺されずに電気出力される。
故にこのマイクロホンは、前方への単一な指向性を持つ事になる。
後ろ側の穴や溝は前方の音を大きく捉えるためにあるのだ。
そして後方で鳴った音を、振動板の表と裏に同時に到達させるための障害物の素材選びや位置決めが、各技術者の工夫の見せどころとなる。

オーディオテクニカ様HPより引用

このように、音の引き算によって余分音を拾わないように設計者が考えてマイクを作っているのです。

まとめ

マイクの指向性を理解することは、PAをする上ではとても重要なことです。

しっかり理解して適切なマイク選び、そして、最高の音の提供ができるようにしていきましょう。