
デジタル伝送のメリットとデメリット
デジタル伝送には、大きなメリットがあることはPA機器のデジタル化とネットワークのページを読んでいただいた方は理解していただけていると思います。
しかし、当然ながら、デメリットも存在します。このページでは、デジタル伝送のメリット・デメリットを様々な視点から説明していきます。
機材コスト
デジタル伝送のメリットとして機材コストが挙げられます。
デジタル伝送システムで使用されるCAT5ケーブルや光ファイバーケーブルは、多芯のアナログマルチケーブルに比べると非常に安価です。
デジタル伝送システムが出始めた頃は、伝送システムを構成する機器がアナログのマルチボックスよりも高額だったこともあり、決してコスト的なメリットがあったわけではありませんでした。
しかし、その状況も徐々に変わり、デジタル伝送機器も安価になってきています。
デジタル伝送システムを使用する場合は、アナログシステムを使用する場合と比べると、PAシステムの構成が大きくなればなるほどコストメリットが大きくなるということが言えます。
レイテンシー
レイテンシーというのは、信号の伝達や処理の遅れによって発生するものです。
これはデジタルシステムを使用している限りは常について回る問題です。
デジタル伝送システムのレイテンシーは、伝送規格や設定によって異なるります。
レイテンシーが大きすぎるシステムというのは、現場で使い物にならないシステムということになります。
許容できるシステム全体のレイテンシー
PAシステムのレイテンシーというのは、AD変換、デジタル伝送、コンソール内部での信号処理、イコライザー、スピーカーマネージメントシステムといったPAシステム全体のレイテンシーの合計値のことを言います。
レイテンシーは伝送の回数だけ発生してしまうことも忘れてはいけません。
ステージ→コンソール→ステージ→アンプ→スピーカーという伝送をした場合、各伝送の過程でレイテンシが発生するため、全体のレイテンシーとしては、無視できないレベルになってしまうこともあります。
では、どれくらいのレイテンシーが許容範囲なのでしょうか?
この指標になるのが、客席に向けられたスピーカーから出た音がお客さんに届くまでの時間です。
スピーカーからお客さんまでの距離が20mだったとすると、音がお客さんまで届く時間は約60msです。
この値よりも十分にレイテンシーの値が小さければあまり問題はないでしょう。
しかし、スピーカーとお客さんが近い場合は、数msのレイテンシーの違いが無視できなくなってしまいます。
さらに、イヤモニなどを使用した場合は、レイテンシーを感じやすくなるはずです。
ライブレコーディングへの対応
PAシステムがデジタル化することによって、大きな追加コストをかけずにマルチトラックライブレコーディングが実現できます。
また、過去にレコーディングした音をミキサーの入力チャンネルに設定することでアーティストがいなくてもある程度のサウンドチェックができてしまうというメリットもあります。
この音は、必ずしも生の演奏と同一の音ではないものの、時間のある時にアーティストに負担をかけることなく音を作り込めたり、アーティストの方に直接会場の音を確認してもらうこともできます。
私は、ドラマーでもありますので、客席で自分の演奏を聴くということは一生出来ません。
しかし、このような方法であれば、それが実現できるのです。
デジタルミキサーの革命児的なモデルであるBEHRINGER社のX32にもこの機能は搭載されています。
DAWのオーディオインターフェースとしても使用できるのです。