カラオケと生演奏は全くの別物

私は中学時代からドラムを初めて、高校生2年くらいの時に初めてバンドを組むという経験をしました。その時にボーカルに選んだのが「カラオケがうまい」と言われていた女の子でした。一緒にカラオケに行ったこともあったので、「確かにカラオケはうまいな」と思っていました。しかし、いざ、バンドの中で歌わせてみると「ん?」ということになってしまったのです。

「カラオケがうまい」=「ライブで良い歌を歌う」とは限らない

カラオケでうまかったその女の子でしたが、バンドの生演奏の中で歌ってもらうと、期待していたほどの声が出なかったのです。2,3曲演奏するとのどがきつそうな状況になっていました。また、声も通らず、バンドの演奏にボーカルが負けてしまっているような状況でした。この時、カラオケがうまいからといって、バンドの生演奏の中で良い歌を歌えるとは限らないということを始めて実感しました。

カラオケと生演奏の違い

まずは、カラオケの環境とバンドの生演奏の環境は大きく異なるということを理解しなければなりません。カラオケで流れる音楽はボリュームのツマミを回せば自由に調整することが出来ます。一方、生演奏の場合は、基本的には音量の調整が難しいドラムの音が基準になります。ドラムの音量に合わせて、ベースの音量を調整し、ギターの音量を調整するのです。そして、出来上がったバンドのサウンドに最後に歌を乗せていくというのが一般的なバンドの音量調整の手法です。当然、バンドでの生演奏をする際にはボーカルはマイクを使用して、PAシステムから自分の声を出してもらうわけですが、ボーカリストの後ろで鳴っているドラムやベースやギターの音は直接耳に入ってくるわけです。基本的にはこれらの音に負けない程度の声が出ないとバンドの中で埋もれてしまうボーカルになってしまうのです。
カラオケでもしっかりとお腹から声を出して歌っていた人は、バンドの中でもしっかりと通る声を出すことが出来ます。むしろ、そのような方がカラオケで歌うと「うるさい」くらいです(笑)
バンドの中で存在感のある歌をお客さんに届けるためには、楽器の生音に負けない声が必要ということになります。

ボーカルを殺してしまう原因は楽器隊にもある

ここまでは、「ボーカルがバンドの生演奏に負けない声を出せない」ということが、バンドの生演奏の中でボーカルの存在感を出せない原因であるというように書いてきましたが、ボーカルの存在感が出ない原因はそれだけではないのです。ボーカルが出せる声の大きさというのには限度があります。いくら腹から声を出していても、後ろでギターをフルボリュームで鳴らされてしまったら、いくらなんでも勝てないわけです。このように、楽器を演奏する側も「ボーカルをしっかりと聴かせる」という意識を持って、自分が出す楽器の音を絞る勇気を持たなければなりません。
ギタリストは大きな音量で気持ちよさそうに演奏していても、聞いているお客さんからしたら、歌は聞こえないし、各パートのバランスも悪いという聴くに堪えない音楽になってしまうのです。ボーカルが静かに歌うところでは、楽器隊も少しボリュームを落とすといったような気づかいをするとバンドとして表現力が付き、更に良い演奏ができるようになるでしょう。

まとめ

バンドでボーカルを初めてやる人は、初めてバンドの生演奏で歌う際にカラオケの感覚で歌ってしまいがちですが、「カラオケの環境」と「バンドの生演奏の環境」とでは、全く違う環境であるということを知らなければなりません。また、そのボーカルを苦しめすぎないためには、楽器隊の協力も必要不可欠であるということを知っておきましょう。