リハーサルのデータを音作りに活用する

大規模な会場で行われるプロのライブは、事前に「ゲネプロ」という本番同様の条件(場所、スタッフ、機材等)で流れを確認をするということを行います。
これは、本番の会場で行う場合と、リハーサルスタジオで行う場合があります。
PAの場合は、その際の音声データを録音しておくことで後々メリットが出てきます。
まずは、そのメリットを説明します。

音作りの精度向上

リハーサルの音声データを残しておくことで、出演者がその場にいなくても音作りが可能ということになります。リハーサルというのは、1つのイベントの中で1つの出演者が何度もやるものではありません。
リハーサルをやるその時間の中で、出演者からの要望などを考慮した音作りをしていかなければならないのです。
しかし、時間の制約が厳しいと満足な音作りがリハーサル中にできないこともあるのではないでしょうか。
そのような場合に、活躍するのが、リハーサルの音声データです。
リハーサルを行う際にチャンネルごとの音声データを録音しておけば、リハーサル終了後で、出演者がステージ上にいない状態でも、その音声データをミキサーの各チャンネルに割り当ててあげることで、リハーサルの状態を再現できます。
もちろん、ステージ上に演奏者はいないため、楽器の生音は聞こえませんが、ミキサーに入ってくる音はリハーサルの時と同じ音なので、EQの調整やコンプのかけ具合の微調整、エフェクトのかけ具合の微調整などを改めて確認できるのです。
このやり方の良いところは、「何度も調整できる」ということことです。
当然、本番前なので時間が無限にあるわけではありませんが、いちいち演奏者に「○○の部分を確認したいので、もう一度曲を演奏してもらってもいいですか?」という必要がなくなるため、ミュージシャンへの負担軽減にもなります。
そして、録音データを使用するため、気になるところは何度でも再生できるため、よりシビアな調整ができるのです。
このように、リハーサルの音声データを用いることで、より精度の高い音作りができるようになるのです。
ただし、これは、あくまで保険的な位置付けで考えておいた方が良いかと思います。音作りは基本的にはリハーサル一発勝負です。この短時間の中で、いかに音作りを完了させるか?という研究は怠らないようにしたいですね。

デジタルミキサーとDAWを活用

リハーサルの音を録音して、活用するというのはご理解いただけたかと思いますが、実際にどのようにそのような環境を構築すれば良いのかを説明していきます。
これを行うためには以下の機材が必要です。

  • デジタルミキサー(PCと接続可能なポートがあるもの)
  • DAW(Pro Toolsなど)がインストールされたPC

近年、デジタルミキサーの低価格化とDAWの低価格化が進んできたため、このような環境は割と簡単に構築できるようになったのではないでしょうか?
例えば、低コストでこの環境を構築しようと思えば、

  • デジタルミキサー → BEHRINGER X32
  • DAW → Pro Tools

といった構成が良いかと思います。
X32の背面パネルには、USB(Firewire)ポートが装備されています。これにより、USBケーブルを使用してPCと接続することが可能となります。ドライバーのインストールなど細かい設定をする必要はありますが、割と簡単にデジタルミキサーの音をマルチトラックレコーディングできる環境を構築できるのです。
こうすることで、バスドラム、スネア、ドラムトップL,R、ベース、ギター、ボーカルといったそれぞれのパートの音をPC上に録音していくことができるのです。
そして、録音したデータの出力先をデジタルミキサーのそれぞれのチャンネルに立ち上げてあげる(設定してあげる)ことで仮想的なリハーサルの状態を作り出せるのです。
ここまでできてしまえば、あとは、気になるポイントを再生して音作りをしていけば良いのです。

アナログミキサーを使用する場合などでは、このような環境を構築するのはものすごくハードルが高いですし、セッティングに時間もかかります。
デジタル機器が普及した現代だからこそできる方法ですので、やってみると面白いし、非常に便利だと思います。