ギター単体の「良い音」はバンドの中での「良い音」か?

バンドの中で使用されるギターというのは、多くは「エレクトリックギター」と呼ばれるギターです。エレクトリックギターというのは、アコースティックギターとは異なり、積極的に音を変えて演奏する楽器です。
そのエレクトリックギターの音作りには、それぞれのギタリストのこだわりがあるかと思います。エフェクターを使用し、そのパラメーターを操作して様々な音を作り上げていくのがギタリストの楽しみでもあると思います。

そんなギターのサウンドですが、当然「正解」というものは無いのですが、ライブを見ているお客さん目線で見てみると、「不正解」というものは、はっきりと分かってきます。例えば、

  • ギターの音がキンキンし過ぎていて耳が痛くなった
  • ギターの音が歪み過ぎていて、かつボリュームも大きかったため、ボーカルの歌が聞こえなかった

これは、良い音楽を聴きに来たお客様からすると、目的を達成できない要因になってしまいます。このような状況を招いてしまうような音作りは「不正解」と言えるかもしれません。中には、キンキンするギターサウンドや大音量のギターサウンドを好むお客様がいるかもしれませんが、それは少数派だと考えましょう。より多くの方に満足して帰っていただくためには、「不正解」の音を出さないことが重要なのです。

ギター単体で正解と思った音はバンドの中で正解か?

ギターの音作りをする際には、多くの場合は、自宅または練習スタジオなどで行うと思います。そこでギターアンプから音を出しながら音作りを行っていくと思います。そして、試行錯誤した末に渾身のギターサウンドが出来上がるわけです。
そして、その音を引っさげてバンド練習に臨むのです。全体で合わせた瞬間に「あれ?」と思うことは良くあるのではないでしょうか?ギター単体で鳴らした時は良い音が鳴っていたのですが、バンドの中で鳴らしてみると存在感の無い音になってしまうというということが起こってしまうのです。
当然狙い通りになる場合もありますが、多くの場合は「あれ?こんなはずじゃ・・・」となるのです。
このように、ギター単体で正解と思った音は、バンドの中で鳴らした時に正解になるとは限らないのです。

なぜバンドの中でギターを鳴らすと音が変わってしまうのか?

原因は様々あると思いますが、それは、他の楽器との干渉が原因の場合が多いです。PAオペレーターの仕事というのは、この干渉をいかに避けて全ての楽器がきれいに聞こえるようにするかということです。これを同じことをバンドサウンド内で出来ていれば、PAは各楽器の音をそのまま大きくすればOKということになります。ということは、PAがどのように音の干渉を避けているかを知ることで、バンドサウンド内において各パートの音の干渉を避けることが出来るということになります。
音の干渉が発生しているというのは、言い換えると「音のケンカ」が発生していると言い換えることが出来ます。例えば、同じ周波数帯の音がバンドサウンド内に存在していたとすると、音量が大きい方が勝ってしまいます。つまり、ボーカルとギターが同じ周波数帯で音を出していた場合は、ギターの音が大きすぎればボーカルは聞こえなくなります。このような現象をマスキング効果と言います。詳しくはこちらの記事で解説しております。
しかし、これでは、ギターとボーカルを両方うまく聞かせることが難しくなります。そこで登場するのが「音のすみ分け」という考え方です。これは、つまり「主に担当する周波数帯を割り振る」ということに他なりません。これをすることで、バンド内で発生する音の干渉を最小限に抑えることが出来ます。

具体的な対策

スタジオなどで練習をする際には、ボーカルやドラムは、生音で勝負する楽器であるために、音質の調整は困難です。そこでアンプやエフェクターで簡単に音質調整が出来るギターやベースの音を変えてみるということをすると良いでしょう。
ギターであれば、本体側のトーンをいじってみたり、アンプ側のイコライザーをいじってみたりと試行錯誤してギターもしっかりと聴こえて、かつボーカルの声も聞こえるといった音を見つけるといったようなことを地道にやるしかありません。
あとは、歪みの使い方も重要です。ギタリストとしては、歪みを多用したいという気持ちも分からなくはないですが、場合によっては、単体で聞くとペラペラなクリーンサウンドの方がバンドの中で引きたつ場合もあります。これは、状況により様々ですので、試行錯誤してみてください。

一番、「音の干渉」を感じられるのは、レコーディングをした時です。それぞれのパートの音はバッチリなのに、合わせると「う~ん・・・」となる場合もあります。しかし、DAWソフト上のイコライザーなどでギターの音質調整をすると他の音との干渉が無くなり、各パートが良く聴こえるようになるのです。このような音質調整をギタリスト側で出来ると良いのかもしれませんね。