要望が伝わるセット図の書き方

「セット図」とはミュージシャン(バンド)がPAオペレーターに対して、「うちのバンドはこんなセッティングでお願いします」という意思表示をするための紙です。

ライブハウスなどでは、事前(場合によっては当日)に提出を求められます。

その他のイベントでも基本的には事前に提出を求められます。

PAオペレーターはこれを見てオペレートしていく訳です。

裏を返せば、このセット図にPAオペレーターが知りたいことが書かれていないとミューシャンの要望はPAオペレーターに伝わらない可能性が高いということになります。

PAオペレータがセット図で確認することしては、大きなところで言うと以下の3点です。

  • バンドの構成・立ち位置
  • 使用機材
  • 特殊な持ち込み機材の有無

それでは、1項目ずつ解説していきます。

バンドの構成・立ち位置

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PAをする上で、バンドの構成と立ち位置は重要です。

バンドの構成の情報はPAのインプットプラン(ミキサーのどのチャンネルにどのマイクを繋ぐか)を考える際に絶対に必要です。

特に出張PAの場合はこの情報が無いと機材セレクトが出来ないのです。

分かりやすい例で言うと、弾き語りミュージシャンのソロライブのPAに32チャンネルのミキサーは必要ないのです。

また、バンドの構成が分かれば使用するマイクの種類や本数、モニターの系統数なども決まってきます。
このような情報を事前にもらうことによって、PAオペレーターは持っていく機材のセレクトをしているのです。

また、立ち位置を知ることによって、PA側で準備するマイクやDIの位置、配線プランを組み立てることが出来ます。

特に配線にはこの情報が必要です。

私はケーブルをステージ上に這わせる際には「出来るだけきれいに」というのを心がけています。

これを実現するためには、マイクやDIを置く位置が確定していなければなりません。

これらを考慮し、しっかりとセット図を描くことが良いライブをするための第一歩です。

使用機材・配置位置

PAオペレーターはミュージシャンが出す音をお客様に聞きやすいように調整してスピーカーから出すことが仕事です。

これをするために、まずはどのような音が出る予定なのかを知る必要があります。
それが「使用機材」を知るということです。

これにより使用するマイクなどが決定します。

そして、その機材がどこに配置される予定かを知ることで初めて、マイキング(マイクをどこに立てるか)のプランが決まります。

この2つの情報を知ることでPA側では適切なマイクを適切な場所に配置するプランが立てられるのです。

特殊な持ち込み機材の有無

 

LINE6 ( ライン6 ) / XD-V75 Handheld

特殊な持込機材の代表例としては、ワイヤレスマイク(システム)があります。

ワイヤレスマイクを持込で使用し、かつPA側で保有しているワイヤレスマイクも使用するということになった場合、想定される問題は「電波の干渉」です。

細かく言えば電波の種類(A帯,B帯,2.4GHz帯など)の説明をしなければならないのですが、長くなるのでここでは触れません。

ここで言いたいのはPA側では、ワイヤレスの電波干渉が起きないような対策をしなければならないと言うことです。

チャンネル変更や、異なる周波数帯のシステムに変えるなどといった対応が必要になります。

更に、ワイヤレスマイクの干渉チェックを真面目にやろうとすると結構な時間が必要になります。

このようなことを理解していただいた上でワイヤレスマイク(システム)を使用していただけるとPAをする者としては嬉しいです。

もうひとつの例としては、ドラムのタムなど太鼓類の持込です。

ドラムをフルマイキングする場合、タムが1つ増えるとマイクが1つ増えます。

つまり、ミキサーのチャンネルが1チャンネル分追加で必要となります。

ミキサーのチャンネル数に余裕があれば問題ありませんが、余裕がない場合が多いのでこのような情報は事前にPAオペレーターに伝えておかないとオペレーターが本番で慌てることになります。

以前、私がオペレートしたライブのドラマーさんが「4タム(2タムが基本セット)ですのでよろしくお願いします。」と事前打合せでおっしゃっていたので、それを考慮して他のチャンネルを節約してなんとか4タム分のチャンネルを確保したのですが、ライブ当日に「やっぱり3タムでいきます」と言われた時にがっかりしました。

このようなことはPAオペレーターにとっては迷惑以外の何物でもないので、このページを見ているあなたは絶対にしないようにしましょう。

これらの観点を踏まえて具体的なセット図の描き方を順を追って説明いたします。

【セット図の描き方】

  1. 各パートの立ち位置を記入する。
  2. 使用するアンプ、ドラム類の配置位置を記入する。
  3. ベース、アコースティックギターなどの音の拾い方を記入する。
    ラインで集音するのかマイクで拾うのか、またDIを持ち込むのかを記入。
  4. ボーカルはマイクスタンドを使うかどうかを記入する。
    スタンドでもストレートスタンドなのかブームスタンドなのかも書いてあると良い
  5. コーラスマイクの必要/不要を記入する。
  6. モニタースピーカーの希望位置を記入する。
  7. 特殊な持込機材があれば記入する。
    代用的な特殊持ち込み機材は、ワイヤレスシステム、ドラムの太鼓類、ファンタム電源が必要なマイク、DIなどがあげられます。
  8. 記号で表せない細かい要望は文字で追記する。
    例えば、管楽器などでクリップマイクを使いたい場合などは記入しておかなければなりません。
    また、マイクの種類を指定する時も文字で書いておきましょう。
  9. その他、書いておいたらPAオペレータが喜びそうなことは書いておいた方が良いでしょう。

以上がセット図の書き方です。

セット図の書き方があいまいだとPA側で予測しながらやる部分が多くなり、それに伴いPA側で準備する機材量も増えます。

また、余分な調整を行う時間が発生してしまうため、本来すべき音の確認が出来なくなってしまったり本番での演奏時間が短くなってしまったりする可能性もあります。

これらは、正確なセット図を書けるようになれば発生しない問題ですので、正確なセット図を書けるように意識してみましょう!